【20日】安藤さん: 某イベント肯定/否定立論

12月20日、本日はなんとなんと安藤温敏さんです!!豪華!

 

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11月下旬の某イベントに出場するために作成した肯定側立論と否定側立論を公開します。周りが全員JDA出場組という、リサーチ面でもスピーチ面でも圧倒的不利な状況で、何とか戦える議論を作ろうと無い知恵を絞りましたが、結果的には肯定側/否定側とも負けて2敗となりました。

肯定側立論は、JDA秋季大会の試合を見ていて、肯定側で唯一残りそうなイシューは「政権交代」かなあ、というところからスタートしています。今季はトリッキーなカウンタープランや、ちょっとしたPlan Spikeで避けられそうなデメリットが多い印象だったので、プラン部分を自由にAmendすることで、こうした議論を避けられるのでは、と考えて、観察の議論をつけました(通常であれば、こうしたHypothesys Testing的な考え方を導入するのは諸刃の剣なので、あまりお勧めできるものではありませんが…)。

否定側立論は、これまたJDAの試合などを聞いていて、今更プレパしてもちょっと勝ち目ないな…と思い、何とか肯定側の議論をうまく利用して勝ちに行ける方法は、と考えてひねり出したものです。ちょっと考えればいろいろ弱点は出てくるのですが、作ったときはPermutationに弱いだろうな、と思っていました。結局実際の試合ではTopicalityで来られて、不意打ちを食らった形になり、負けてしまいました…。試合では、論点4は1NCで読んでおらず、それ以前の部分をゆっくり読んで1NCを終えて、Permuteされたときの反論用に論点4を用意していました(が、結局Permutationは無かったので、一応2NCで読んだものの、ちぐはぐな感じになってしまいました…)。

では、ご笑覧ください。

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■■■肯定側立論■■■

観察1:判断の枠組み

A 私たちは、政策論題の下で政策ディベートを行っています。

B このディベートにおいては、議論の中で最良の政策を決定し、それが論題に含まれるか、論題の外にあるか、で、肯定側に投票するか否定側に投票するかを決定します。

C そのため、肯定側は、否定側の提出するデメリットやカウンタープランなどの議論に対抗するために、第二立論以降でプランの修正や追加、カウンタープランの取り込み等を行うことによって、最良の政策を追求する権利を有します。

観察2:判断基準

A 議会のシステムを議論するにあたって、そのアウトプットとしての法律の質は、判断基準になりません。なぜなら、ある法律が良かったか悪かったか、は立場によって変わるものですし、短期的・長期的など見方によっても評価は定まらないからです。すなわち、政治というのは、結局のところ利益配分をどうするか、という問題であって、国内外に様々な立場の人がいる以上、評価は多面的にならざるをえず、絶対的な評価は不可能だからです。

B 現在の代議制民主主義のシステムを確立するために、我々の先祖や友人が多くの血を流してきています。古くはフランス革命アメリカ独立戦争、そして第二次世界大戦。現代でも香港の民主化運動など。これらの犠牲を前にしたときに、システムのアウトカムとしてのちっぽけな利益や不利益に振り回されて決定を行うのは愚かなことです。

C したがって、我々はシステムの「結果」ではなく「プロセス」に目を向けるべきです。この時、システムを選択する基準になるのは、「透明性」と「公平性」です。

C-1 まず、政治は透明である必要があります。ある政策がどのようなプロセスで生まれたのか、どのような議論があったのか、不透明な状態で結果だけ示されても、それが良い政策であったとしても再現性がないし、失敗した場合にその後どうすれば良いか検討することもできません。

C-2 加えて、政治は公平でなければなりません。政治が腐敗し、国民の総意に基づかない、特定利益集団が優遇されてしまうことは、国民が選挙で投票する意味を無くし、国民の無気力感、ひいては更なる政治参加の抑制につながり、最終的に民主主義の破壊につながるため、絶対に避けなければなりません。


以上を踏まえて、プラン

1 日本は2025年より衆議院参議院を統合し、一院制を実施します。
2 当面の国会諸制度は、まずは衆議院に準じますが、状況に応じて柔軟に変更します。


プランによるメリット:政権交代

論点1:内因性

A 二院制の存在が、政権交代を妨げ、現状の自民党政権を永続させ、癒着や腐敗の温床となっています。

A-1 衆議院総選挙のみならず、二回の参議院選挙でも勝利しないと、真の政権交代とならず、自民党政権の克服が困難を極めています。

駒沢大学、大山、2004年
「おまけに、日本には衆議院総選挙の結果だけで政権の枠組みを決定できないという事情もある。意外に認識されていないことかもしれないが、日本の二院制は英国などの諸外国と比較して、第二院(つまり参議院)の権限が強力であるところに特徴/がある。[中略]結局、たとえ、衆議院過半数議席を占める政党であっても、同時に参議院過半数を確保しない限り、安定した政権運営は望めないということになる。」終わり。
[大山礼子(おおやまれいこ・駒沢大学法学部教授)『マニフェストで政治を育てる』雅粒社、2004年、p.131/132]

A-2 2009年には、奇跡的に民主党衆議院総選挙で勝利し、政権交代が実現しましたが、一年もたたないうちに、翌年の参議院選挙で敗北したために、それ以降まともな政策を打つことができずに、民主党政権は短期で終了してしまいました。このような状況では、利権構造を根本的に変えることは難しいです。

過去の政権交代では、短期間で自民党政権に戻ってしまったため、自民党のシステムを崩すことができませんでした。

東京大学、御厨、2013年
「一九九三年の「政権交代」、二〇〇九年の「政権交代」、いずれも反自民のうねりの中で誕生した新政権は、内部分裂を主たる要因として、片や一〇カ月、こなた三年三カ月で崩壊の憂き目にあった。さすがは酸いも甘いも噛み分けた、あたかも”ヤリ手婆”のごとくに、自民党は/政権奪還をなしとげている。今やもうこの国の統治機構の中に、半永久的にしっかりと組み込まれ分かち難い存在であるかのようだ。」
御厨貴(みくりやたかし・東京大学先端科学技術センター客員教授)『政権交代を超えて──政治改革の20年』岩波書店、2013年、p.153/154]

A-3 自民党長期政権が、官僚との癒着や腐敗の温床となってしまっています。

駒沢大学、大山、2004年
「政官財の構造的癒着、与党を中心とする閉じられた政策決定過程、有力政治家の談合によるリーダー選出など、日本政治の問題点として指摘される事柄の多くは、/長期に及んだ一党優位体制と深く関わっている。政権交代の可能性がほとんど存在しなかったため、自民党政権下で形成された既得権益を優先する政策決定が常態化し、自民党総裁(すなわち首相)の選出では、有権者の支持を獲得できるリーダーの擁立という目的よりも仲間内の論理が先行してきた。」
[大山礼子(おおやまれいこ・駒沢大学法学部教授)『マニフェストで政治を育てる』雅粒社、2004年、p.vii/viii]

B 二院制の存在により、参議院との水面下の交渉を余儀なくされ、政治の不透明性につながっています。

政策研究大学院、竹中、2010年
「ですから、参議院の影響力というのは、何も参議院における法案審議過程にだけあらわれるのではなくて、事前に参議院の意見を織り込んで法案の内容を準備したり、あるいは衆議院であらかじめ法案を修正したりすることにも表れていると考えるべきです。[中略]その織り込む過程というのは、参議院における法案審議過程が始まる前にやるのではないか。だから、それ以前の政治過程も見ないと参議院の影響力というのははかることができないのです。」
[竹中治堅(たけなかはるかた・政策研究大学院教授)「参議院とねじれ国会」日本記者クラブ研究会「参議院」①、2010年8月2日、https://s3-us-west-2.amazonaws.com/jnpc-prd-public-oregon/files/opdf/468.pdf

論点2:解決性

A 一院制を取ることにより、総選挙一発勝負で政権が決まることになり、政権交代の可能性及び、政権交代した時の安定性が高まります。

実際、スゥエーデンでは、1971年に一院制を採用するまでは約25年で2回の政権交代だったのが、一院制採用後の約10年で5回の政権交代を実現できています。

B 政権交代が定着することにより、透明性および公平性の確保が可能になります。

上智大学、河崎、2018年
「しかし中道や左派の政党が長期的に政権に就くことで、行政官僚の中にも多様な政策志向が浸透していく可能性がある。また政権交代の機会が高まることで、官僚の側も特定の政党に近づきすぎることに慎重になるだろう。我が国でも政権交代可能な政治をめざすこと、自民党以外の政党による長期政権が誕生することが肝要と思われる。」
[河崎健(かわさきたけし・上智大学国語学部教授)「先進国との比較でみる日本官僚制──政官の癒着防止には政権交代可能な政党政治の確立が不可欠──」『改革者』59(6) 2018年6月、政策研究フォーラム編、p.9]

実際、ネブラスカ州では、一院制にすることにより、水面下での交渉などが無くなり、政治の透明性が増しました。

ネブラスカ州副知事、ロバク、1997年和訳
「委員会会議がなくなったことで、秘密交渉やロビー活動が法律制定に影響を及ぼす可能性も減少した。一院を減らすことによって、理にかなった法案が通過する機会を失うことが少ない、より効率的なシステムができた。シンプルで、開かれたシステムは、議員たちに、選挙民に対して応える責任を植え付ける一方、公衆には、自分たちが選んだ議員のパフォーマンスを判断するための、公に十分な情報が提供されることになった。」
[Kim Robak (Nebraska Lieutenant Governer), “The Nebraska Unicameral and Its Lasting Benefits”, Nebraska Law Review Volume 76 Issue 4, 1997, https://digitalcommons.unl.edu/cgi/viewcontent.cgi?article=1523&context=nlr
[原文]
“Eliminating the need for conference committees reduces the likelihood that secret negotiations and the lobby will influence legislation. Reducing the system to one house creates a more efficient system without sacrificing the opportunity to pass well-reasoned legislation. A simple, open system places responsibility on legislators to answer their constituencies while giving the public sufficient information to judge the performance of its elected officials.”]


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■■■否定側立論■■■

否定側政策:Parallel Diet または平行議会

プラン

1 否定側は、二つの議会を用意します。その各々は、肯定側提案内容と全く同一のものとしますが、以下の点のみ異なります。

A 一つの議会は東日本に置き、二つ目の議会は西日本に置きます。その範囲であれば、場所は特に重要ではないので、任意とします。これらを仮に「東院」「西院」と呼びます。

B 「東院」「西院」の任期はそれぞれ4年とします。選挙時期は2年ずつずらして、2年ごとに各院の総選挙を行います。解散は認めません。

C 同時に両議院の議員になることはできません。

D 内閣総理大臣は、直近の総選挙のあった院から出します。

E 内閣による、法案を含む議案は、「東院」「西院」に半分ずつ提出します。提出する議案の内容は、内閣で決定します。

F 各院で可決した法案は、それぞれ独立して法として成立します。

G 各院は、お互いの院に提出された法案への反対ないし妨害法案を提出することはできません。また、内閣不信任決議もできません。

2 その他、必要に応じて、プラン内容は2NC以降で追加・修正します。


論点1:非命題性

カウンタープランは複数の議会を用意するので、一院制ではありません。


論点2:競合性

カウンタープランは、複数の議会を持つ事がその本質なので、一院制と同時採択することはできません。


論点3:優位性

カウンタープランは、あらゆる点でプランより優れています。

A カウンタープランは、プランの二倍の速度で法案を通すことができます。「東院」「西院」の最大政党が同じであれば、両院は完全に同じ国会として機能し、一院だけで処理する速度の二倍の速度で議案を処理することができます。また仮に「東院」「西院」の最大政党が異なる場合も、内閣が各院に送る法案を選択することによって、反対派の院であっても法案を成立させることができます。

A-2 実際、分裂議会でも、閣法の成立率自体はほとんど変わらないので、提出する法案を選べば、野党が多数を占める院でも法案を通過させることは十分可能です。

慶應大学、松浦、2017年(表の閣法審議結果引用)
一致    2005年(162)    84.3%
一致    2006年(164)    90.1%
一致    2007年(166)    91.8%
分裂    2008年(169)    78.8%
分裂    2009年(171)    89.9%
一致    2010年(174)    54.7%
分裂    2011年(177)    80.0%
分裂    2012年(180)    66.3%
分裂    2013年(183)    84.0%
一致    2014年(186)    97.5%
一致    2015年(189)    88.0%
一致    2016年(190)    89.3%

[過去10年(2007-2016)において、一致議会(5年)の平均84.3%、分裂議会(5年)の平均79.8%]
[松浦淳介(まつうらじゅんすけ・慶應義塾大学SFC研究所上席所員)『分裂議会の政治学参議院に対する閣法提出者の予測的対応─』木鐸社、2017年、p.20]


B カウンタープランは、プランよりも政権交代の可能性やその緊張感を高めます。プランの倍の頻度で総選挙が行われ、かつ、一回の総選挙に勝利すれば政権を取ることができるので、この点でもプランより優れています。

C カウンタープランにおいても、政策の責任は明確です。内閣は、重要法案であれば、自分たちが多数派の院へ送れば良いですし、反対院に送って否決されたとしても、それは政権のミスなので、責任が不明確、という事はあり得ません。


論点4:カウンタープランメリット 災害対応

A 固有性

今後、東京での大震災やテロ、停電などで国会機能が停止する可能性が高いです。

芝浦工業大学、大内、2006年
「直下型にせよ、プレート型にせよ、「首都大震災の危機」はますます迫っています。直下型とプレート型が同時に来てしまうことだってあり得ます。現在、中央防災会議でいろいろな議論が行われていて、専門家から、例えば帰宅困難者が600万人以上出てしまうなど、さまざまなシミュレーションが出されています。あるいは、海外の保険会社が、東京はほとんど保険もかけられないほど大きな危険をはらんだ都市であるという評価をしている例もあります。さらに、テロの問題や、大停電などでシステムが機能しなくなるという問題もあります。民間企業、特にグローバルに展開している企業は既にバックアップの措置をとっているのに、国政だけが何もしていないのは問題であると思います。」
[大内浩(おおうちひろし・芝浦工業大学工学部教授)「緊急性と重要性を兼ね備えた首都機能移転と新しい都市デザイン」平成18(2006)年12月5日 https://www.mlit.go.jp/kokudokeikaku/iten/onlinelecture/lec106.html

国会以外の行政機能は、地方支分部局などに退避しつつあるので、鍵になるのは、国会機能のバックアップです。

国立国会図書館、山口、2013年
「我が国でも、1980 年代後半以降の首都機能移転論議の傍ら、国の行政機関の一部移転が進められ、主に、東京都多摩地区や埼玉県さいたま市、神奈川県横浜市川崎市などに、国の研究・研修施設、関東地方を管轄する地方支分部局、当時の公団・事業団が移転している。」
[山口広文(やまぐちひろふみ・国立角界図書館専門調査員)「大規模災害時における首都機能の継続性をめぐる視点」『レファレンス』2013年2月 http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_7800398_po_074501.pdf?contentNo=1

B 発生過程

災害発生時に、東京にしか国会機能が無いと、災害対応が麻痺してしまいます。

芝浦工業大学、大内、2006年
「大事なことは、「災害被害者は災害救済者には決してなれない」という点です。阪神・淡路大震災のときには、たまたま大阪はそれほど大きな被害は受けませんでしたし、東京は全く被害がなかったということもあって、国会が召集され、復興支援のための特別立法を30本以上制定することができました。しかし、東京が大震災に遭った場合、1週間、あるいはもっと長く国会や行政が機能しない可能性もあります。このような場合では特別立法を制定するどころの話ではありません。」
[大内浩(おおうちひろし・芝浦工業大学工学部教授)「緊急性と重要性を兼ね備えた首都機能移転と新しい都市デザイン」平成18(2006)年12月5日 https://www.mlit.go.jp/kokudokeikaku/iten/onlinelecture/lec106.html

C 深刻性

現状や、プランのように、東京にしか国会機能がない状況では、国家としての機能が麻痺してしまい、復興もままなりません。複数拠点を持つことにより、こうした被害を避ける事は重要です。

芝浦工業大学、大内、2006年
「では、そのときにどうすればよいのでしょうか。私は、いつ、どこででも閣議や国会を開けるようにしておくことが日本にとってふさわしい選択ではないかと思います。[中略]大事な点は、「首都機能が同時被災しない」ということです。つまり、同時被災しないところで閣議や国会を開催できるというシステムをつくることが危機管理における最大のテーマであると思います。」
[大内浩(おおうちひろし・芝浦工業大学工学部教授)「緊急性と重要性を兼ね備えた首都機能移転と新しい都市デザイン」平成18(2006)年12月5日 https://www.mlit.go.jp/kokudokeikaku/iten/onlinelecture/lec106.html

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