【24日】池田さん: スタッフ一筋だった自分が、JDA大会で学んだこと
0. はじめに
こんにちは。秋のJDA大会にTKとして参加させていただいた、池田と申します。そのご縁で今回の企画にお声かけいただき、大会の感想を書かせていただくことになりました。
拙い文章で大変恐縮ですが、この素敵な企画の一助となれば幸いです。
これから、3点に分けて感想を述べたいと思います。
1. 決勝戦について
私は僭越ながら決勝戦のTKをさせていただきました。決勝戦ではガチガチに緊張してしまいましたが、その緊張も忘れるくらい心を動かされた瞬間が2つありました。
1つ目は、否定側の零院制の立論を聞いた時です。
普段はTKの業務に必死で議論の内容はほとんど耳に入らないのですが、零院制の話を聞いた時は「えっ面白い!」と思わず聞き入ってしまいました。
今までカウンタープランなどにあまり触れてこなかったためもあるかもしれませんが、普段は別々の論題として議論される2つの政策を組み合わせることで理想的な制度になるという主張に衝撃を受けました。このお話を聞いて、昔ジャッジから「MDだけでなくもっと大きな視点で政策を語れると良い」と言われた意味を、今更ですが少し理解できた気がしました。
2つ目は、両選手による試合前の挨拶を聞いた時です。
個人的に、試合前の挨拶は選手のお人柄や大会までの努力が伝わってくる気がして、毎回楽しみにしています。今回の決勝戦は、メンバー全員がJDAの決勝に初出場するチームと、かつて決勝に出た時と全く同じメンバー・パートで再び戦うチームという組み合わせで、どの方のお話もすごく感動しました。
中でも個人的に共感したのは、ある選手が「今までジャッジをされていた方と戦った」と仰っていたことです。JDAでは、社会人チームと学生チームで対戦したり、社会人と学生で一つのチームを組んだりするのが当たり前のように行われています。ですが、普段選手をしていない立場から見ると、そのように選手の競技歴などに関わらず、誰でも対等な立場で戦える点はディベートならではの魅力だなあと感じます。
また、ある選手の方が、「社会人になってもディベートは楽しめる」と強調されていたのも印象的でした。ディベート界には多様な方面で活躍されている先輩がいますが、個人的にはそういう方々にも惹かれ、これからも何らかの形でディベートに関わり続けていきたいなと思っています。
今大会の論題である一院制には、私も高校三年生の時にディベート甲子園の選手として取り組みました。個人的には、初めて選手をさせていただいたこともあり、非常に難しい論題でした。
選手をしていた当時は、政治制度などの深い部分について中々理解できず、用意した原稿を読むことで精一杯になっていました。それでも、チームメイトに引っ張っていただき、有難くも決勝戦まで進むことができました。決勝戦では、自分の持てる力を全て出して取り組みましたが、自身の議論理解の甘さに加え、基本的な資料の引用などについても至らない点が多く、力不足を痛感する試合となりました。
またチームとしても、シーズン中にずっと考えてきた点に、納得のいく答えが出ないまま終わってしまったような感じがしました。メンバーが悩んでいる姿をずっと見てきて、決勝戦の講評でも観点の良さを褒めていただいた分、もう少しだったのになあというもやもやした思いが残りました。
このような思い出とリンクして、一院制にはかなりネガティブなイメージを抱いていました。
ですが3年経って、今秋のJDAで一院制の試合を拝見した時、知らない資料がいくつも出され、新しい議論が展開されていることに驚きました。当時とは選手の方の知識量に違いがあることはもちろんですが、二立形式や英文資料の引用等でも議論の幅が大きく広がることを感じました。一院制ってこんなに奥が深いんだと驚くと同時に、これを知らずに中高でディベートを終わらせてしまうって少しもったいないのかもしれない…と気づきました。
また、高校卒業後はずっと選手からは遠ざかっていましたが、今大会の皆さんの試合を聞いて、またディベートをやってみたいなと思うようになました。(その影響で、先日初めて即興の大会にも参加してしまいました。)
ディベートは、何年ブランクがあってもふとしたきっかけでまた楽しさを思い出してしまう、不思議な中毒性のある競技だと思います。また、選手じゃなくても、私のように試合を観戦し選手が試行錯誤されてきた議論を聞くだけで、様々な発見を得られる気がします。
3. 選手の方々について
今大会は、昔一緒にディベートに取り組んだ方や、運営で知り合いお世話になった方も沢山、選手として参加されていました。学業や仕事がお忙しい中ディベートに真摯に向き合われ、こんなに白熱した試合をされている選手の皆さんを見て、純粋にかっこいいなあと思いました。
ディベートが大好きじゃないと選手は続けられないというイメージがありましたが、今回の大会で、そのような方もすごく大変な思いをしながらディベートに取り組まれていること、また勇気を出して久々にディベートに挑戦される方も実は多くいることを知りました。そんな選手の姿を間近で見ることができて、大会スタッフはすごく幸せだなと改めて感謝しています。
4. 最後に
今大会に参加しなければ、私にとって一院制論題は苦い思い出のまま終わってしまっていたと思いますし、ディベートの魅力にもう一度気づくこともできなかった気がします。なので、スタッフとして参加する機会を頂いたJDA大会の運営の皆様には本当に感謝しております。また一スタッフである私にこのような寄稿の機会を下さった、アドベントカレンダーの運営の皆様にも心から感謝申し上げます。