【9日】衣田さん: 肯定側立論

Debate Advent Calendar 2021

4日目の今日(12月9日)!

 ご紹介するのはJDA秋季日本語大会に選手としてご参加だった衣田勇也さんの記事です!実際に試合で使った資料を惜しげなく紹介してくださるなんて衣田さんも太っ腹!ありがとうございます!

 今回の一院制の論題で人気のあった政権交代や法案可決のスピードアップといった王道の議論なので参考になる点が多そうです。ここをおさえずして、ですね!

 

以下、衣田さんから頂戴した記事です。

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私がご紹介するのは肯定側立論です。

私自身のディベート経験がまだ浅いということもあり未熟な立論と思いますが、それでもディベートは経験や技術の巧拙関係なく楽しめるし、学びの深いものだと少しでもお伝え出来たらと思い投稿致しました。

 ですので、今回は感想をベースに今回ご紹介する立論の背景や狙いに少し触れていく感じでお伝え出来ればと思っております。

                                        

立論の背景・狙いと、試合を通しての感想や学びについて

今回の論題は「日本は国会を一院制にすべきである」という個別政策に対する是非ではなく、議会の形を変えることで政策全体がどうなっていくかを議論する形の論題になっており、立論段階から苦戦を強いられました。

 全体の政策の変化について語れば具体的に何が起こりどう良いのかというインパクトが不明確になり、具体的な事例を提出すると互いの事例の勝負のような形になってしまい、どのように結論を出し立論を作成すればいいのか最後まで悩み、考え続けました。

 その中で今回の立論を作成にあたり狙っていたことは、最終反駁から考え、立論段階で否定しきれない事実をベースとしていくつか入れることでした。どんな反駁があろうと最終反駁でそこから自分たちが主張したい理想の一院の形を主張できればと考え修正を加えながら作成致しました。抽象論題だからこそ、確実に最後まで残る議論をするにはどうするのかを考え続けた結果だと感じております。

 今までは最初に立論を作成し、それに対応できるようにブリーフを作成しておりましたが、今回の大会で最終的な議論として最初の立論を提出し、そこから反駁や尋問を考え議論・ブリーフを作るべきであるという本来ディベートの基本である視点を学ぶことが出来ました。

 試合結果としては全敗となりましたが、出場されたチームの方々と対戦し、試合を観戦させていただいたことで多くの学びを得ることが出来たと感じております。

 JDAに出場される多くのチームの方々とはまだまだ実力に大きな差を感じてはおりますが、どのような結果になってもディベートの試合は楽しいものだと改めて実感致しました。実力差があるからこそ学べることも多いと思います。

 また、講評をいただいたジャッジの方々、運営の皆様にも感謝しております。この場を借りてお礼を述べさせてください。

 多くの学びをご提供いただき、ありがとうございました。

                                                   

肯定側立論

まず肯定側のプランを提示します。

1.参議院を廃止し一院制にします。

 

観察

1.日本の二院制の構造上、衆参選挙どちらかで政権交代が起こると必ずねじれ国会になります。

政策研究大学院大学准教授 竹中 2012

近年、自民党政権民主党政権共に「ねじれ」国会への対処に難渋している。自民党は2007年7月の参議院選挙に大敗し、この結果、連立与党の公明党と合わせても参議院過半数議席を確保できなくなる。

中略

2009年9月の政権交代とともに「ねじれ」は解消する。ところが、2010年7月の参議院選挙で民主党が敗北したために国会は再び「ねじれ」になる。(おわり)

(nippon.com 2012年

https://www.nippon.com/ja/currents/d00038/)

 

2.この構造により、衆議院選挙で政権交代を果たしても安定政権を作るためのハードルが極めて高くなっています。

元エール大学助教授 斉藤 2011

日本の憲法制度では、衆議院参議院裏表と、3回の選挙を勝たないことには安定政権をつくることができないという高いハードルが設定されています。(おわり)

(Synodos  2011

https://synodos.jp/opinion/politics/1601/ )

 

以上の観察から一院制にして得られるメリットは2点。

 

メリット1. 政策競争の実現化

 

内因性

1.野党が政権の座を獲得するのが極めて難しいことで、現実的な対応を考える事なく反対に徹するようになります。

立命館大学 上久保 2013

野党は政権の座を意識することがないと、政策については現実的な対応を考える必要がなく、反対に徹することになるからだ。(おわり)

(DIAMOND online 2013

https://diamond.jp/articles/-/39118?page=3 )

 

2.実際に野党は政策を議論することに疎かになり、スキャンダルや審議拒否をして成立を遅らせるという形で反対に徹しています。

慶応義塾大学教授 松井 2020

野党からすれば、何のために国会で論争をするのかというと、成立を少しでも遅らせて、あわよくば廃案に追い込む。場合によっては強行採決という形で与党が強引に採決させることを、「横暴だ」と訴えることしかできないような状況になっています。どうしてもスキャンダルを追及したりして、「ときを止める」と言いますが、国会審議が紛糾して空転するという形に持って行く。あるいは審議拒否をして、欠席戦術に持ち込むという形になってしまう。本来は政策の中身について、野党はどういう対案を出しているのかという議論をしなければいけないのが、疎かになってしまうのです。(おわり)

(ニッポン放送 NEWS ONLINE 2020

https://news.1242.com/article/217249 )

 

重要性

1.より良い政策実現のためには、与野党間の政策競争が必要です。

同志社大学 吉田 2016 47ページ

それというのも有権者の代表党首が支持を求めて競い合えば競い合う程有権者の高揚も高まる可能性も高くなるからです。それは市場において企業同士の健全な競争があることで消費者の利益が増えていくのと同じ構図です。(おわり)

(吉田 徹 2016 「野党」論―何のためにあるのか  47ページ)

 

解決性

1.プラン後は一院のため、選挙に一勝するだけで安定政権をとることが出来ます。

 

2.さらに衆議院小選挙区制は、政権交代の可能性が高く、政権が安定するという特性を持っているので政権交代をしやすいシステムだけが残ることになります。

三田市ホームページ 

小選挙区制では、ひとつの選挙区から最多得票者1人が当選します。政権の選択についての国民の意思が明確な形で示される、政権交代の可能性が高い、政権が安定するなどの特性を有しています。(おわり)

(三田市ホームページ

https://www.city.sanda.lg.jp/senkyo/hireidaihyou.html )

 

  1. 解決性1と2により、内因性で述べた構造がなくなることで与野党間の健全な法案審議や政策競争が可能になります。

東京大学大学院法学政治学研究科教授 川人 2011

議会における両党の政党間競争においては、政権党・政府は政策を実現するために法律案・予算案などを提案し、野党はそれらを批判し論戦を繰り広げる。しかし、通常は、多数を確保する政権党・政府の提案が可決・成立する。そして、総選挙における政党間競争では、政権党はこれまでの政府統治業績を有権者にアピールして、政権の継続を訴え、野党は政府の政権運営を批判し、政府の進めてきた政策に代わる新しい政策を提案して有権者の支持を獲得しようとし、政権交代を訴える。(おわり)

(Voters 2011

https://www.city.kamakura.kanagawa.jp/senkan/documents/voters04.pdf )

 

メリット2. 決められる政治と政策決定の迅速化

 

内因性

1.日本では議員の政党化が進んでおり、ねじれが起こると野党は次選挙で有利になるために内閣の政策を不必要に妨げ、その結果政策決定が滞ります。

政策研究大学院大学准教授 竹中 2012より引用

「ねじれ」国会は過去にもあった。しかしながら、近年の「ねじれ」国会において与野党はより激しく対立し、このために政策決定が滞ることになっている。

中略

野党第一党は「ねじれ」を利用して、内閣の政策立案を妨げ、次期総選挙での自らの立場を有利にしようとするのである。(おわり)

(nippon.com 2012

https://www.nippon.com/ja/currents/d00038/ )

 

2.実際にねじれ時には、与党の重要法案が置き去りにされました。

毎日新聞 2013

通常国会は26日、安倍晋三首相に対する問責決議を可決して幕を閉じた。7月4日公示の参院選を前に、与野党は対決する構図を強めている。そのあおりで、電力システム改革や生活保護の見直しといった暮らしにかかわる重要法案は置き去りにされた。(おわり)

(毎日新聞 2013

http://www.asahi.com/senkyo/senkyo2013/news/TKY201306270116.html )

 

重要性

1.現在は問題が生じた場合の損害の重要性から不確実性の高い状況の中で迅速な対応をして後から修正していくことが必要です。

慶応大学 川崎 2009

もう一つは、科学技術の発展と判断の困難性・不確実性ということである。(中略)特に、近年は、問題が生じた場合の損害の重大性などから、できるだけ早い段階で予防的な対応を求められるようなケースも増えており、そうなると一層不確実性が高い状況の中で判断を行わざるを得ないことになる。立法者はそのような状況の下で、次々と判断を迫られ、一定の結論を出さざるを得なくなっているのである。そして、それらに対応していくためには、とりあえず一歩前進ということで漸進主義な対応を行うとか、柔軟性をもたせた制度とするとか、場合によっては実験的な対応を行うようなことも、選択肢となってこよう。(おわり)

(川崎 政司 2009 「立法をめぐる昨今の問題状況と立法の質・あり方:法と政治の相克による従来の法定な枠組みの揺らぎと、それらへの対応」)

file:///C:/Users/user023/Downloads/AA1203413X-20090125-0043.pdf )

 

2.しかし、参院があることで多くの迅速に対応すべき政策があるのにもかかわらず迅速な対応が困難になっています。以下参院の問題点についてのエビデンス

東洋経済 2011

第一に、以前と比較して一層のスピードが要求される政治状況にもかかわらず、機敏な政策対応が極めて困難になってきている点。

現在、国内に東日本大震災原発事故、財政・社会保障制度一体改革などの大問題が存在するのに加え、米国と欧州を震源とする世界規模の経済危機にも直面している。外交では、日米関係の冷却状態が続いているうえ、領土や安全保障で新たな問題が次々と発生している。このような環境下で何より重要なのは、政府の機敏で強力な対応である。(おわり)

(東洋経済 2011

https://toyokeizai.net/articles/-/8125?page=3 )

 

解決性

1.二院制から一院制になることで国民に約束した与党の政策が成立するようになります。ネブラスカの事例です。

専修大学教授 藤本 2008

例えば,図表①からも明らかなように,1999年の第96議会では883本の法律案が提出されており,その中で327本の法律が成立している。つまり,39%の成立率である。それは,全米平均の約二倍である。その意味するところは,一院制議会が提案された法律案を処理するに際し,大多数の州議会(二院制)のよりも効率的(Efficient)であるということである。(おわり)

(藤本 一美 2008 「ネブラスカ州一院制議会」)

https://core.ac.uk/download/pdf/71792088.pdf )

 

2.メリット1の解決性も伸ばしてください。

野党が不必要な政策の妨げをしなくなるのでメリット1からも迅速化が望めます。

 

adventar.org

 

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